離婚後に養育費が未払いになった場合は、まず支払いを求める記録を残し、合意書や公正証書、調停調書などの内容を確認します。強制執行できる書類があるかどうかで、その後の手続きが変わります。
養育費が未払いになったときの対処法
次の順番で進めると、相手への請求と裁判所の手続きを整理しやすくなります。
- 未払いの月、金額、支払期限を一覧にする
- 相手に支払いを求め、やり取りを保存する
- 合意内容を証明する書類があるか確認する
- 必要に応じて家庭裁判所の履行勧告や強制執行を申し立てる
1. 未払いの内容を整理する
通帳の入金履歴や領収書を確認し、未払いの月と金額を整理します。たとえば「2026年1月分から3月分まで、月5万円、合計15万円」のように、支払期限も含めて記録してください。
相手から一部だけ支払われている場合は、合意した金額との差額を計算します。メッセージ、メール、振込記録、合意書なども削除せず保存しておきます。
2. 相手に支払いを求める
まずは、未払いの金額と支払期限を明示して、支払いを求めます。電話だけでなく、後から確認できるメッセージや書面で伝えることが重要です。
文面には、次の内容を入れます。
- 未払いになっている対象月
- 未払いの合計金額
- 振込先
- 支払期限
- 支払えない事情がある場合は、いつまでに連絡を求めるか
相手が「収入が減った」「再婚した」などの事情を伝えてきても、合意済みの養育費が自動的に減額されるわけではありません。金額を変更するには、当事者同士の合意や、家庭裁判所での調停・審判が必要になることがあります。
合意書や公正証書がある場合の手続き
養育費の支払いについて、強制執行認諾文言付きの公正証書、調停調書、審判書、判決書などがある場合は、相手が支払わなくても強制執行を検討できます。
| 書類の例 | 未払い時の主な対応 |
|---|---|
| 強制執行認諾文言付きの公正証書 | 条件を満たせば、裁判を改めて起こさず強制執行を申し立てられる場合がある |
| 調停調書・審判書・判決書 | 内容に基づいて強制執行を申し立てられる |
| 当事者間で作成した合意書 | 書面だけでは直ちに強制執行できないことがある |
| 口頭の合意 | 合意の存在や内容を証明する資料が必要になる |
強制執行では、相手の給与や預金などの財産を差し押さえる方法があります。給与を差し押さえる場合は勤務先、預金を差し押さえる場合は金融機関の支店など、対象を特定する情報が必要です。
養育費のような扶養に関する債権は、通常の金銭債権と異なる取扱いを受けることがあります。ただし、差し押さえの範囲や申立書類は個別の事情で変わるため、申し立てる裁判所や弁護士に確認してください。
強制執行できる書類がない場合
当事者間の合意書しかなく、強制執行認諾文言もない場合は、その合意書だけで直ちに財産を差し押さえることはできない可能性があります。この場合は、家庭裁判所に養育費請求の調停を申し立てる方法があります。
調停では、養育費の金額や支払方法について、家庭裁判所を通して話し合います。話し合いがまとまらず調停が成立しない場合でも、事情によっては審判に移り、裁判所が判断することがあります。
過去の未払い分を請求できる範囲は、合意の内容、請求した時期、未払いの経緯などによって変わります。未払い分をすべて請求できると決めつけず、資料をそろえて早めに確認してください。
家庭裁判所の履行勧告を利用する方法
調停調書や審判書など、家庭裁判所の手続きで決まった養育費が支払われない場合は、家庭裁判所に履行勧告を求められることがあります。家庭裁判所が相手に決定内容を守るよう促す制度です。
履行勧告は、裁判所から支払いを促してもらえる点が特徴ですが、これだけで給与や預金を差し押さえる手続きではありません。相手が応じない場合は、別途、強制執行を検討します。
利用できるか、必要な書類や申立先は、養育費を決めた家庭裁判所に確認してください。
相手の勤務先や財産が分からない場合
強制執行をするには、差し押さえる財産を特定する必要があります。勤務先や預金口座が分からない場合は、給与や預貯金などの情報を調べるための裁判所の手続きが利用できることがあります。
ただし、相手の住所、勤務先、財産の情報が古い場合や、転職・転居している場合は、手続きが進まないことがあります。分かっている勤務先、過去の振込口座、相手の住所、連絡先などを整理しておくと確認しやすくなります。
財産の調査や差し押さえの申立ては書類の不備があると補正を求められるため、自分で行う場合は申立先の地方裁判所に必要書類を確認してください。
相手が「払えない」と言っている場合
相手に収入がないなどの事情があっても、未払い分が自動的に消えるわけではありません。一方で、相手の収入や資産状況によっては、直ちに全額を回収できないこともあります。
相手の収入が大きく減った、病気や失業で支払いが難しくなったなどの事情がある場合、養育費の減額調停を申し立てることがあります。減額が認められるかどうかは、双方の収入、子どもの年齢や人数、事情が変わった時期などを踏まえて判断されます。
相手が一方的に減額している場合は、減額について正式な合意や裁判所の判断があるのかを確認してください。納得できないまま口頭で減額を認めると、後で未払い額の計算が難しくなることがあります。
未払いを防ぐために確認したいこと
今後の支払いについて合意し直す場合は、金額だけでなく、次の事項を文書にしてください。
- 毎月の支払額
- 支払日
- 振込先と振込手数料の負担者
- 支払期間や終了条件
- 入学費、医療費などの臨時費用の分担
- 収入や生活状況が変わった場合の協議方法
将来また未払いになった場合に備えるなら、合意内容を公正証書にする方法があります。ただし、強制執行認諾文言の有無などによって効果が異なるため、公正証書を作成する際は内容を確認してください。
養育費の未払いで最初に行うこと
最初に、未払いの月・金額・支払期限を一覧にし、合意書、公正証書、調停調書などの書類を確認してください。
強制執行できる書類がある場合は、履行勧告または給与・預金などの差し押さえを検討します。書類がない場合は、家庭裁判所の調停などで支払い内容を確定させる手続きが基本です。相手の収入減少や減額の主張がある場合は、未払いの請求と減額の話し合いを分けて整理し、必要に応じて家庭裁判所や法律相談で確認してください。







